新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 到着した電車に乗り、二駅先で降りる。人通りの多い商店街に向かって歩いていると、一際目を引く男らしいうしろ姿が目に入った。

 スーツは肩で着るもの。という格言があるように、前を歩く男性のうしろ姿は、肩のラインがきれいに出ている。

 百八十センチ以上ある長身で、スラッとしていて本当にスーツがよく似合う。まるで新川部長のようだ。

 社内を案内してもらっている最中、何度も彼のうしろ姿を見ては心ときめかせていた。

 うしろ姿でさえもかっこよくてときめくって、いったいどういうことですか? なんて心の中で突っ込みを入れて。

 本当、数時間前の自分は舞い上がっていたと思う。ひとめ惚れして勝手に運命の相手と決めつけ、まるで王子様のような理想を押し付けていた感が否めないもの。
 新川部長のことなんて、なにひとつ知らないというのに。

 面接の日、助けてくれたし嫌な人ではないと思う。優しい人じゃないかな。それに仕事がデキて、今日見た限りでは部下からの信頼も厚い。

 やっぱり私の理想通りの素敵な人。……婚約者がいて当然、か。

 トボトボと歩を進めていくと、私の進行方向上にはうしろ姿がかっこいい男性がいる。
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