新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 商店街を抜ければ住宅街だし、なんら不自然ではないが……。
 街灯に照らされた男性のうしろ姿をよーく見ると、非常に見覚えのあるスーツと髪型。

 え、ちょっと待って。うしろ姿が似ているとは思っていたけど、もしかしてもしかすると、まさかの新川部長本人だったりする?

 バレないように少しずつ距離を縮めていく。すると急にある一軒の店の前で足を止めたものだから、慌てて近くにあった電柱に身を潜めた。

 気づかれた? と思い、一気に緊張が高まったが、チラッと見るとどうやら洋菓子店に用があったようだ。

 中入っていく姿を確認し、そっとガラス越しに店内の様子を見ると、ケーキを選んでいたのはやはり新川部長だった。

 なんという偶然! 最寄り駅が同じだったなんて。いや、普通、ケーキなんて買って帰らないよね? 婚約者である彼女の家がこの近辺なのかも。

 それにもし新川部長と最寄り駅が同じだったとしても、余計につらいだけ。

 これから私は、一刻も早く新川部長への恋心を消さないといけないというのに。
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