新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 胸を痛めているとドアが開き、店員の「ありがとうございました」の声に見送られて新川部長が出てきた。
 どこか嬉しそうに買ったケーキが入った箱を見つめていた。

 あの顔……。やっぱり婚約者の家に行くのかも。

「いいな、羨ましい」

 私もいつか、想いを通わせる相手と出会い、素敵な恋愛ができるのだろうか。
 ふと、そんな自分を想像してみたができない。

「なんか一生独身でいる気がする」

 これまでの人生を思い返せば、そんな気がしてならない。どうしよう、せっかく第二の人生を歩むと決めて転職し、上京してきたというのに一生独り身だったら。

 そんな不安に襲われたが、すぐに首を左右に大きく振った。

 弱気になっていたらだめだよね。失恋しちゃったけど、せっかく新たな人生の一歩を踏み出したのだから。

 それに失恋を忘れさせてくれる出会いがあるかもしれないじゃない!

 前向きな気持ちになり、新川部長の姿が見えなくなったのを確認して颯爽と歩き出す。

 上京した私が今日から暮らすのは、シェアハウス。最初は会社の近くにひとりで暮らすための物件を探していたが、どこも家賃が高くて諦めざるを得なかった。

 通勤には不便になるが、郊外の家賃が安い物件を探そうとしていたところに、シェアハウスを紹介されたんだ。
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