新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
「俺もなにか力になりたいと思うが、それを陸は望んでいない。彩香との婚約を続けていることに対しても、申し訳なく思っているようだから。……親友のためなら、一肌も二肌も脱ぐのにな」

 そう話すジョージさんは、大家さんに頼ってもらえず、寂しいと思っているように見えた。

 ジョージさんと金子さんの家は、普通の一般家庭ではない。結婚さえ自由にできないと理解できた。想い合っているだけでは結婚できないのだと。

 大家さんは自分に自信がつくまでと言うが、もう五年経っているんだよね? その自信はいつつくのだろうか。

 叶先生の知名度は高いほうだと思う。きっと出版業界って売れなければ次がない世界でしょ? そんな中で、コンスタントに新刊を出しているのだから。

 もう充分な気がする。……でもそれを決めるのは他の誰でもない、大家さんだ。

 それもまたわかるからこそ、もどかしくてじれったい。話を聞き、なんとも言えぬ気持ちでいっぱいになり、ジョージさんにかける言葉が見つからなかった。
< 73 / 277 >

この作品をシェア

pagetop