新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
『幸せになってほしい!』
 ジメジメとした梅雨も、そろそろ明ける見込みだと昨夜の天気予報で聞いた。
 今日は朝から快晴。久しぶりに太陽を見た気がする。

「眩しい」

 カーテンを開けると、部屋中に日差しが挿し込む。

「よし、今日からまた頑張ろう」

 ひとり気合いを入れて準備に取りかかった。

 三ヵ月間の試用期間が終わり、七月一日。今日から正規雇用に切り替わる。
 昨日まで金子さんにみっちり学び、営業のノウハウを改めて身につけた。

 今後は商談に同行させてもらったり、取引先にうかがったりして、棚割りなど実践的なことを学んでいくことになる。

「名刺は残り半分になったら言ってくれ。いつどこで交換する機会があるかわからないから、常に持ち歩くように」

 出社後、ジョージさんに呼び出された私たちは、オフィス内にあるミーティングルームでそれぞれ名刺を受け取った。

 そこには当然ながら【アラカワ製菓 営業部 川端涼】と書かれている。

 入社して三ヵ月経つが、こうして名刺を手にしてやっと転職したんだと実感する。

 私も井手君ももらった名刺をジッと眺めていると、ジョージさんは力強い声で言った。
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