新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 この三ヵ月間で、何度もふたりの幸せな姿を見てきた。本当の意味で幸せになってほしい。

「認めてくれないなら、ふたりで駆け落ちすればいいんです! 大家さんの仕事は場所を選ばないじゃないですか。好きな人と想いが通じ合って、一緒になりたいと思える相手と出会える確率は低いんですよ? 誰もが叶えられるものではないんです」

 現に私がそうだ。この歳になるまで好きになれる人と出会えなかった。せっかく出会えても、実るかどうかわからない。

 大半の人がそうではないだろうか。運命的な恋愛に憧れていても、現実にはそんな出会いに恵まれない。

「ふたりは絶対に一緒にならなきゃだめです! そうじゃなければ……っ」

 そこまで言いかけたとき、腕を掴まれた。
 びっくりして横を見ればジョージさんと目が合う。次に優しく微笑んだものだから、ドキッとして言葉が出ない。

「そうだな、川端の言う通りだ」

 力強い声で言うと、ジョージさんは私に座るよう促した。

 胸を苦しくさせながら、言われるがまま腰を下ろす。するとジョージさんは掴んでいた私の腕を離し、そっと囁いた。

「ありがとう」

 その声があまりに優しくて息を呑む。
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