新婚未満のかりそめ初夜~クールな御曹司は淫らな独占欲を露わにする~
 いまだに取り囲まれている彩香のもとへ行き、パンパンと手を叩いた。

「そろそろ始業時間だ。各自準備に入れ」

 一斉にこちらを見ると、今度は俺に向かって祝福の声が飛んできた。

「新川部長、おめでとうございます!」

「俺たちからしてみたら、やっとかって感じですよ~!」

 あっという間に俺を取り囲んだ部下をたしなめる。

「ありがとう。だが、まだ正式に公表していないことだから、これ以上は触れないでくれ」

 そう頼めば、口々に「わかりました」と返事をし、それぞれ席に戻っていく。
 周囲に誰もいなくなったところで、彩香が小声で言った。

「ありがとう、助かった」

「予想外だったな、こんなに噂が広まっていたことは」

「うん。真実が明かされたときのみんなの反応が怖いけどね。……でも平気」

 そう話す彩香の横顔は、幸せでいっぱいといったところ。

「それでジョージのほうは大丈夫だったの? おじさん、怒っていなかった?」

「怒ってたよ。……だが俺も平気だ。根気強く父さんと向き合うさ」

 これまでそうしてこなかった分、今こそしっかりと父さんに自分の気持ちをぶつけるときだと思うから。
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