クールな王子は強引に溺愛する
突然の求婚宣言
朝露に濡れ宝石のように赤く煌めくのは、若草色の葉に隠れ実をつける野苺。
木々に囲まれた、森の奥にある開けた小高い丘の上。まばゆい朝日を浴び、幻想的な風景を作り出す。
「エミリーお嬢様。今日はこの辺りに致しましょう」
侍女であるモリーの声に顔を上げる。
春のうららかな風が頬を撫でた。
「そうね。たくさん収穫できたわ」
質素なドレスに身を包み、腰にメイドたちが掛ける白いエプロンをつけたエミリーは、赤く染まった指先の手の甲で額を拭って微笑んだ。
ここアンベリール王国は偉大な王が統治する大国だ。現国王も近隣諸国との友好関係を続け、大きな争いもなく穏やかな暮らしを実現している。
その大国の中でも王都からかなり離れた王国の端。森を所有する小さな土地がエミリーの父の領地であるエストレリア伯領。
田舎でも自然豊かなエストレリアがエミリーは大好きだ。
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