クールな王子は強引に溺愛する
ふたりの間に沈黙が降りた。しばらくした後、リアムが口を開く。
「話が逸れてしまったな。次期国王は兄のバージルこそが相応しいと、話したのは覚えているか?」
「はい」
「それならば俺がいつまでも王子の座に固執していなくてもよい。無駄な後継者争いに巻き込まれたくもないしな」
王族というのは、自分の意思だけではなく、周りの思惑も渦巻く凄まじい場所なのだろうと想像した。
そして、そんなところに身を置くリアムを自分は支えたいと思っていたのに……。なにも出来ずにいる自分が、エミリーは不甲斐なかった。
「さまざまなしがらみがあり、想定より準備に手間取ってしまったが、俺は王子の座を捨てる」
どこか晴れやかな顔をするリアムを、まじまじと見つめる。
「王子でない俺は嫌だというのなら、考え直さなくもないが?」
片眉を上げ、試すように言うリアムに、目を見開いてクスクス笑う。
「そんなに清々しいお顔をされているのですから、考え直すおつもりはありませんでしょう?」
「ああ、まあ、そうだな」