クールな王子は強引に溺愛する

 久しぶりに見た笑顔のエミリーは、やはり花が綻ぶように麗しい。この顔が見たかったのだと胸が熱くなり、エミリーを抱き寄せる。

「リ、リアム様?」

「ついてきてくれるか」

「ええ。もちろんですとも」

 顔を覗き込み、唇を重ねる。頬を染めるエミリーは人形ではなく、人間らしく恥じらっているように見えた。

 途端に色欲が顔を出しそうになり、どうにかそれを押し留める。

 ここで抱いてしまっては、これまでとなにも変わらないではないか。

 リアムは平静を装い話を続けた。

「近いうちに王都を離れる。また長い馬車旅になるだろう。部屋に篭っておらず、体力を付けた方がいい」

「はい。ですが、出歩くと再びキッシンジャー卿にお会いしてしまいそうで」

 体を微かに震えさせるエミリーをリアムは強く抱き締める。

「そうか。奴に怯えていたのか」

「"奴"だなんて、失礼ではありませんか?」

「なにを言う。俺は王族だぞ」

「王子の座に固執せず、捨てると」

 目を見開くと、それを見たエミリーはおかしそうに笑った。

 そうか。俺たちは会話が足りていなかったのだな。

 リアムは根本的な点に気付き苦笑する。

 体を重ねる前はこうして話していたものだ。その心地よさと、大切さをすっかり忘れていた。
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