クールな王子は強引に溺愛する
困ったことに可愛らしい
「まあ。エミリー様!」
部屋に様子を見に来たモリーが、驚きと喜びの入り混じった声を上げた。
ここ数日、モリーが部屋に来てもベッドから起き上がってもおらず、モリーに促されのそのそと這い出るエミリーが今朝は起きて窓の外を眺めていたのだ。
「おはよう。モリー」
朝日を浴びたプラチナブロンドが煌めいて揺れ、こぼれる笑顔がまぶしい。
「おはようございます。エミリー様。本日は護身術をお学びになるそうで」
「ええ。リアム様にお許しをいただいたの」
いくらモリーが明るく振る舞ってみても、反応の薄かったエミリーが明るい表情を見せている。
良くも悪くも今のエミリーはリアム次第なのだと痛感する。
準備を済ませると、護身術の講師の元を訪れた。とても有名な師範らしく、彼女といるときにキッシンジャー卿と顔を合わせても、近寄ってこないどころか、怯えた顔をして立ち去った。
ただとても厳しく、部屋に篭りっぱなしだったエミリーはすぐに根を上げる羽目になった。というよりも、正しくは戦力外通告を受けた。
「これだからお嬢様は」
どこにそんな体力がと思う華奢な体をしている師範のゾーイは、息の上がるエミリーに片眉を上げた。
「いえ。まだまだお願いします」
肩で息をしながらも、体を動かす喜びを思い出したエミリーはゾーイに続きを懇願する。
それにいつまでもお飾り妃と呼ばれ、リアムにただ守られている存在ではいたくない。せめて、自分の身は自分で守れる強さを手に入れたかった。