クールな王子は強引に溺愛する
「根性はあるようだね。だが、怪我をしては元も子もないね。部屋に帰ってもその場で駆け足でも、足上げでも、とにかく体を動かしなさいな。まずはそこからだよ」
初日は護身術の基本さえも教えてもらえず、門前払いだった。
部屋に戻ると長椅子に座り、教わった足上げを試みる。ただ足を上げるだけなのに、腿がプルプルと震える。顔を真っ赤にさせ、しばらく休憩しようと体を長椅子に横たわらせたところで扉が開いた。
扉を開けたのはリアムだった。エミリーの姿を見て見開いた瞳と目が合う。
「ひゃあ! も、申し訳ありません! お見苦しい姿を!」
長椅子に足を投げ出して寝転んでいた姿勢から、飛び退いて座り直す。
「いや。こちらも考え事をしていてノックを失念していた。そのような格好をするほど、ゾーイは厳しいのか」
ククッと喉の奥で笑われ、笑われたのにどうしてかうれしくなる。王子の座を退くと話してから、リアムは肩の荷が降りたのか、様々な表情を見せてくれるようになった気がする。