クールな王子は強引に溺愛する
第一王子のバージルは、濃いブラウンの髪にヘーゼルの瞳を持つ。リアムとは違った魅力の持ち主の王子だ。リアムが精悍な顔つきに対し、バージルは甘いマスクで世の女性を虜にする。
精悍なリアムのたまに見せる微笑みか、バージルの甘いマスクから漂う憂いを帯びた眼差しか。どちらにせよ、見目麗しい王子二人には正式な縁談も、非公式な誘惑も後を絶たないのは火を見るよりも明らかだ。
おモテになるというのも、きっと大変なのですわ。
どこか他人事にそう思っているエミリーは、自分がバージルに見つめられている視線に気づき、不安げにリアムを見やる。
「兄上。エミリーが怯えています。誰しもが兄上に見つめられ惚けるわけではありませんよ」
怯えたように見えたのなら、失礼だったかもしれない。謝ろうとエミリーは口を開きかけたが、言葉を紡げずに顔を俯かせる。