クールな王子は強引に溺愛する
「そうか。溶けるか」
リアムはエミリーの頬を優しく撫で、頬に口付ける。その仕草が甘くて照れ臭い。照れるエミリーに、リアムは穏やかな微笑みを浮かべる。
「ふふ。日に日に『レシアス』の面影と重なりますわ」
うれしそうに言うエミリーに、頬を緩めている自分を自覚してリアムは苦笑する。
「『レシアス』のお話をするのは、お嫌ですか?」
控えめにお伺いを立てると、リアムは首を横に振る。
「そうではない。ただ、あの頃は情けない姿も見せている。面影がと言われると、喜んでいいのか」
まだ幼い頃のリアムは王子というだけで危険な目に遭い、過保護に育てられていた。そんな中で城にいては危険が及ぶかもしれないという事態になったとき、疎開をし、エミリーと出会った。
突然の見知らぬ土地での暮らし。王子としての身分を隠し、今まで通りとはいかない不安。
そのせいもあり、思い出すのは女々しい言動をしていた自分。
リアムの不安をよそに、エミリーは柔らかく微笑む。