クールな王子は強引に溺愛する
「お優しいところは、お変わりありませんわ。ただ、とても逞しくなられて驚きました」
「そうだな。背も体つきも随分あの頃とは変わった」
成長期が来て背は伸び、体格も大人の男のそれになったのはもちろんだが、エミリーをいつか迎えに行くとそればかりを心の支えに努力した。
「記憶の中では、どちらかと言えば弟のブライアンのように、心根の優しい男の子でしたわ」
「情けない姿は思い出さぬともよい」
母に会いたいと泣くような軟弱な男だった。けれど、当時のエミリーは優しく手を握り、ただ側にいてくれた。恥ずかしい思い出であると同時に、心が温かくなる記憶でもある。
「ブライアンもリアム様のようになれますでしょうか」
優しい姉の顔に変わったエミリーに心の中で苦笑する。
「ああ。そうだな。きっと立派な伯爵になる」
まだまだ弟のブライアンには、適いそうにない。家族想いのエミリーに感慨深い気持ちになりながらも、胸の奥がチクリと痛くなる。