クールな王子は強引に溺愛する

 それはそうか。家族のために俺の元に嫁いだのだから。

 忘れていたい真実を思い出し、エミリーの体に腕を回す。

「あ、あの、リアム様?」

 きつく抱き締め、なにが起ころうとも手放さないと誓う。それがエミリーを縛っているとしても。

「あの、お恥ずかしいのですが」

「なんだ」

 口籠るエミリーに先を促す。

「なにかお夜食をいただいてもよろしいでしょうか。緊張してしまって、あまり食事に口をつけられなくて」

 腕を解きエミリーを見つめると、バツの悪そうな顔を逸らされる。

「それは考えが至らなかった。腹が空いて眠れないと困る」

「そこまでは申しておりません!」

 顔を真っ赤にさせるエミリーが可愛らしい。つい喉を鳴らすと、ますますエミリーが不満顔をさせ、笑いを堪え切れなくなる。

「すまない。あまりに愛らしくてな。子どもの頃も待ちきれなくて調理場に忍び込んで、焼き菓子を拝借したな」

 おてんばで、それなのに優しいエミリーに心奪われていった子ども時代の記憶が蘇る。

「リアム様こそ、思い出さなくていい場面ですわ!」

 懐かしい話は尽きず、夜が深けても戯れ合うように語り合った。
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