クールな王子は強引に溺愛する
エミリーが護身術を覚えるのに忙しくする傍ら、リアムは相変わらず執務室での残務処理に追われていた。
陛下の家臣の元を訪れ了承を得なければならない事案に、不正を行っていた領地への罰則の対応。
そして今まで第二王子や騎士団の元帥として行ってきたさまざまな仕事を、各々に引き継ぎも済ませなければならない。
忙しさの中であくびを噛み潰していると、グレイソンに笑われる。
「充実した日々を過ごされているようで安心いたします」
「阿保。困ったことにエミリーが可愛いのだ」
ストレートなのろけ言葉に「んんっ」とグレイソンは咳払いをする。リアムは頭を抱えるように自身のこめかみに手を置いた。
「勘違いするな。エミリーと話していると可愛らしくて時を忘れる。お陰でここ数日、肌を重ねる暇がない」
グレイソンが目を点にしてリアムをまじまじと見つめると、不貞腐れたような声を出した。
「阿保は俺だと言いたいのだろう?」
吹き出しそうになる口元を引き締め、「いえ、そのような」とかしこまった声を出した。
グレイソンは心の中で、リアム様はエミリー様に関して、どこまで不器用なのだ。と呆れていた。