クールな王子は強引に溺愛する
護身術を習うようになり、キッシンジャー卿を恐れずに済むのはエミリーの心を晴れやかにした。
お陰で心置きなく朝の散歩を楽しめている。城内の庭園は広く、どこも手入れが行き届いている。
庭園の奥にある薔薇園は蕾をつけており、満開の季節になれば辺り一面が美しいだろう。近くには腰掛けて薔薇を眺められる、東屋が設けられている。
「ここで薔薇を見ながら、リアム様と紅茶でも飲んでのんびりできたら素敵ね」
エミリーが楽しそうに言うと、モリーも「そうでございますね。お誘いされたらいかがでしょう」と同意する。
あとどのくらい城にいるのだろうか。苦手意識のあった城も、リアムとの距離を縮められた今はここで過ごすのも悪くないなと思える。
そんな心境の変化にエミリーは、我ながら調子いいんだから。と、苦笑する。