クールな王子は強引に溺愛する

 部屋でしばらく待っていると、言伝を受けたリアムが柔和な顔をさせ現れた。エミリーは想像上のラルジュ王国の姫君の姿がチラついて、曖昧な笑みを作る。

 そもそもリアムの期待通りの穏やかな昼食は取れないのだ。庭で見たキッシンジャー卿の件を報告しなければならない。

 エミリーは部屋に視線を彷徨わせた後、庭での一件を話し始めた。

 話を静かに聞いていたリアムは、途中から険しい顔に変わり、そして顎を数度撫で、口を開く。

「念のため、今後はあの辺りには近づかないでくれないか。あの場所は……」

 言い淀むリアムが、言おうか迷っている素振りを見せてから驚くべき言葉を口にした。

「毒を生成するところだ」

「毒、ですか」

 リアムは胸の前で腕を組み、一点を見つめながら話す。

「王族というのは、常に命を狙われる宿命。万が一の事態に備え、小さな頃から毒を少量ずつ取っている。あの場所はそれ用の毒を生成しているのだ。さまざまな毒花や毒草、毒を持つ動物に魚などのな」
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