クールな王子は強引に溺愛する
「ただ、エミリーは、知らぬ者から受け取ったものは、口にしないようにしてくれ。心配だ」
注意を受け、しばらくの沈黙が流れる。
「エミリー?」
顔を覗き込もうとすると、エミリーは顔を背けて言う。
「私、知らない人からいただいだものを無闇に食べてしまうほど、無知でもありませんし、食い意地も張っていませんわ」
不満げな声を出すエミリーに、リアムは思わず苦笑する。その笑い声がますますエミリーをむくれさせた。
「リアム様の中で、いつまで私は焼き菓子を隠れてつまむ子どもなのですか?」
苦笑は抑えきれない笑い声に変わり、「まあ」と不満げな声を上げるエミリーに反し、リアムは口元を押さえつつも笑っている。
「すまない。我が妻はどうにも可愛らしくて敵わない」
「そういう類いの可愛らしいは、うれしくありませんわ」
「ククッ。ああ。すまない」