クールな王子は強引に溺愛する

「ただ、エミリーは、知らぬ者から受け取ったものは、口にしないようにしてくれ。心配だ」

 注意を受け、しばらくの沈黙が流れる。

「エミリー?」

 顔を覗き込もうとすると、エミリーは顔を背けて言う。

「私、知らない人からいただいだものを無闇に食べてしまうほど、無知でもありませんし、食い意地も張っていませんわ」

 不満げな声を出すエミリーに、リアムは思わず苦笑する。その笑い声がますますエミリーをむくれさせた。

「リアム様の中で、いつまで私は焼き菓子を隠れてつまむ子どもなのですか?」

 苦笑は抑えきれない笑い声に変わり、「まあ」と不満げな声を上げるエミリーに反し、リアムは口元を押さえつつも笑っている。

「すまない。我が妻はどうにも可愛らしくて敵わない」

「そういう類いの可愛らしいは、うれしくありませんわ」

「ククッ。ああ。すまない」
< 122 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop