クールな王子は強引に溺愛する
届かぬ恋心
様々な準備を進め、ついに城を出る日になった。謁見の間で、来たときと同じように陛下に挨拶をし、馬車に乗り込む。
「すまなかったな。城での滞在は数日のつもりだったのだが、一ヶ月近くいたな」
「まあ! 数日のつもりだったとは存じませんでしたわ」
驚いているエミリーに、グレイソンは呆れ顔でリアムに進言する。
「なによりもまず、重要な事柄をエミリー様にお話しくださいませ」
グレイソンの小言など、いつものように聞き流すリアムに代わり、エミリーが礼を口にする。
「ありがとう。グレイソン。ちなみに今からどちらに向かうのかも、聞いていませんのよ」
あっけらかんと言うエミリーに、グレイソンは目を剥いた。
「リアム様! 貴方という方は!」