クールな王子は強引に溺愛する

 馬車にはエミリー、リアム、グレイソン、そしてもちろんモリーも乗り、とても賑やかな馬車旅になりそうだった。

 ただ、途中、あまりに目に余るからと荷物だけを載せていた馬車の荷物を半分移し、リアムとエミリー、グレイソンとモリーという乗り方になった。

 目に余るというのは、グレイソンの目にはリアムとエミリーがあまりにも仲睦まじく映るらしく、胸焼けがして見ていられないという理由だった。

 他人から見ると胸焼けのする、仲睦まじい夫婦らしい。しかし実はここ数日は夫婦らしい触れ合いはほとんど、というよりも全くしていない。

 眠る前によく話すようになって以来、肌を重ねる前に寝てしまったり、はたまた護身術の訓練で疲労困憊しているエミリーが寝落ちしていたり。あとは常に忙しくしているリアムがそもそも寝室で眠る暇がなかったりもした。

 夫婦なのだから、問題かしら。

 エミリーとしてはリアムとのお喋りは楽しく、今の関係でも十分幸せを感じていた。

 それに夫婦の閨の事情を人に相談するのは憚られ、そして相談するとしたらモリーなのだが、最近のモリーはどこかぼんやりしているのだ。
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