クールな王子は強引に溺愛する
「そうだったのね! 気付かなくてごめんなさい」
「いえ。滅相もない!」
「とてもお似合いだわ! グレイソンには、いい人がいらっしゃるのかしら。あ、まず独り身なのか聞かないと」
あまりのはしゃぎっぷりに、モリーは目を剥く。
「いえ、あの。お待ちください。ただ、麗しいと思っただけでして。そもそも身分違いでしょうし」
グレイソンの身分までは聞いていない。リアムの従者で護衛も兼ねているだろうから、騎士団の中では相応の地位にいるだろう。
モリーは平民ではあるけれど、明るく気立てもよく、贔屓目に見なくとも可愛らしい。
ずっと支えてきてくれたモリーが幸せになってくれたら、どれだけうれしいか。
「リアム様に、それとなく聞いてみましょう?」
モリーは力なく首を横に振る。
「いいんです。私はエミリー様のお側にいられれば」
頑ななモリーに、この話題はお終いになった。