クールな王子は強引に溺愛する
今晩こそはエミリーを腕に抱いて眠ろう。
気持ちが通じてからと誓ってはいたが、肌を重ねたい思いが抑えられない。
エミリーはきっと受け入れてくれる。それから愛を囁いたとて、遅くはないだろう。
寝所に向かうリアムは逸る気持ちを抑えつつ、足早に歩む。そこへエミリーの侍女が馳せ参じた。
「リアム様。無礼をお許しください。エミリー様から伝言にございます」
エミリーの侍女から直接話しかけられる機会はほぼない。グレイソン経由で聞くのが通常だが、今は急を要するのだろう。細かいことを言っていられない。
「なんだ。体調が急変でもしたのか」
侍女は顔を俯かせ、言いにくそうに告げる。
「月のものが、来ましたので、続きの間で休んでおいでです」
リアムは愕然とし、「何故だ」と問い質しそうになる口元を押さえる。月の満ち欠けに合わせ、女性の体に変化があるのは、さすがに心得ている。
ただ、出鼻を挫かれた思いが「どうしてせめてあと一日待てないのだ」と、言っても仕方のない文句をぶつけたくなる。