クールな王子は強引に溺愛する
リアムのひとことで、あっという間にふたり分の食事の準備が用意される。モリーは頭を下げ、なにも言わずに部屋を後にした。
ふたりきりになった部屋で、戸惑いがちにリアムを見つめる。
「お話というのは……」
真っ直ぐな眼差しを向けられ、ゴクリと喉が鳴る。力強く見つめられ、視線を逸せない。
「ジェシカの結婚が決まった」
「え」
唐突な報告に動きを止め、所在なさげに視線を彷徨わせる。エミリーの動揺を感じ取ったリアムは眉尻を下げ、苦笑した。
「邪推はよせ。俺の妻はエミリーだろう?」
「私はなにも申しておりませんわ」
心の中では『リアム様はそれでいいの?』と、答えられては困る質問の嵐が吹き荒れる。
「相手はグレイソンだ」
「嘘……」
目を見開き、言葉を失う。瞬時にモリーの顔が浮かび、切なくなった。
そんな。モリーの恋は叶わないの?
「俺はクリフォード辺境伯になりたかった。ジェシカはこの家から解放され、出来れば俺に譲りたかった。その利害が一致しただけの関係だ。俺がここに来ればグレイソンも付いてくると期待して」
「利害の、一致……」
「俺の妻はエミリー。きみだけだ」