クールな王子は強引に溺愛する
しばらくしてモリーが様子を見に顔を出す。
グレイソンの結婚話をもう聞き及んでいるのだろう。「存じております。なにも仰らないでくださいませ」とだけ言って、黙々とエミリーの世話を焼く。
かける言葉さえ見つからない。エミリーにはどうすることも出来ない。
「男性は月のものを忌み嫌う方が大半ですのに、リアム様は本当にエミリー様を愛していらっしゃいますね」
穏やかに言われ、思わずモリーを抱きしめる。
「エミリー様?」
「ええ。とてもお優しい方で私は幸せ者だわ」
「はい。本当に」
次こそはモリーの恋を全力で応援しようと、固く心に決め、モリーを抱きしめる腕に力を込めた。
リアムはひとり寝の寂しさを感じながら、独りごちる。
「神に試されているようだ」
先に肌を重ねてしまえばいいという浅はかな考えを、嘲笑われた気がした。