クールな王子は強引に溺愛する
「約束したであろう。忘れたのか」
『大人になったら、エミリーにダンスの申し込みをする。みんなの前で踊ろう』
そんな子どもの無邪気な誘いを覚えているのは、自分だけだと……。
エミリーが社交界デビューした頃。リアムは当時から騎士団での活躍は抜きん出ていたと聞き及んでいる。記録上最年少で少尉になったばかりだったリアムは、重要な任務を任され遠征に出向いており自国にはいなかった。
デビューのためにどうにか見繕い、お目通り用のドレスを賄ったエミリーとは天と地ほどの差を感じた。
その後も数度夜会に参加したものの、華やかな世界と自分の置かれた境遇を思うと惨めな気持ちになるばかりだった。
貧乏貴族の娘では、ダンスの申し込みもされず、ただ壁の花と化し時間が過ぎるのを待つだけ。