クールな王子は強引に溺愛する
そんな惨めの始まりとも言える城に行くと、その頃の自分を嫌でも思い出すと覚悟した。そうであるのにリアムとの城での生活は目まぐるしく過ごしつつも、今思い返すとほとんどが幸せで。
リアムは腰に当てていた手を肩に移動させ、引き寄せる。今度は上半身が近づき、隙をついて頬に唇がかすめた。
「リ、リアム様!」
小声で抗議してもククッと喉で笑われる。皆が集まる広間まではもうすぐだ。
「肩を抱かれるのは、嫌か?」
それよりも頬へのキスが……とは言えずに口籠る。
「いえ、恥ずかしくて」
「ちょうどよいではないか。晩餐会の緊張も多少は紛れる」
これには目を見開き、つい笑みをこぼす。
「まあ。リアム様ったら」
クスクスと笑うエミリーはドレスもなにもかもが整えられ、最大限に魅力が引き出されている。
濃い鮮やかな青いドレスは色白の肌をより美しく映えさせる。プラチナブロンドの髪はふんわりとまとめ上げられ、うなじ辺りの線の細さが色香を放つ。
ああ。我が妻はなんと美しいのか。