クールな王子は強引に溺愛する

 射抜くような視線を感じたのか、エミリーは恥ずかしそうに訴える。

「あまり見つめないでください。リアム様の麗しいお姿の隣に立ってもいいのか、すごく気がかりで」

「なにを言う。花さえも嫉妬する」

「まあ」

 リアムは普段から着ている軍服ではなく、燕尾服を身に纏い文字通り王子様だ。見目麗しい貴公子の呼び名がふさわしい。

 だから、恐れ多くて言おうか迷っていたこのドレスを選んだ理由を、大袈裟な褒め言葉を受け口にする。

「このドレスをひと目見たときにリアム様を思い出しましたわ。とても綺麗な色で、いつも着られている軍服と、それにリアム様の美しい瞳みたいだと……キャッ」

 広間への扉ももうすぐそこになる通路で抱きしめられ、小さな悲鳴を上げる。

「可愛いことを言うな。なにもかもを放り出し、今すぐ閨に逆戻りしたくなる」

 悩ましい瞳で覗き込まれ、体がゾクリと反応する。薄く開いた色気漂う唇が優しく重なり、そこから深いキスへと変わる。溶けてしまいそうなほど熱い口付けに抗えず、体を預けた。
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