クールな王子は強引に溺愛する

「んんっ」

 咳払いに唇は離され、エミリーは火照る顔をリアムの胸に埋めると、頭上から不満を漏らす声がする。

「邪魔をするな」

「あまりにも目に余りますゆえ。あと数時間辛抱くださいませ」

 後に控えるグレイソンに指摘され、居た堪れない。近くにいるモリーも目のやり場に困ったに違いない。

 そんなふたりの視線さえも忘れるほど、周りが見えていなかった。

「エミリー様。紅を引き直しましょう」

 モリーの控えめな提案に顔を上げる。けれどリアムは腕の中から離すつもりはないらしく、離れないままの姿でモリーと向き合う。サッと紅を施され、モリーはすぐに退いた。

 扉を開ければ、皆が集まる広間へと足を踏み入れる。

 改めて腰に手を回したリアムがエミリーに耳打ちをした。

「今夜、この晩餐会が終わったら、エミリーに話したいことがある。聞いてくれるか」

「はい」

 想いを伝えよう。リアムはそう決意した。
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