クールな王子は強引に溺愛する
扉が開かれると、目が眩むような華やかな照明がまばゆく、怯みそうになる。腰の引けそうなエミリーをグッと支え、見上げると優しく微笑まれた。
リアムとエミリーの登場に気付いた近くの令嬢が、惚けたため息を漏らしているのが気配で分かる。
昔は父とも交流のあった伯爵や子爵に男爵。実にさまざまな貴族が一堂に会する。なにを言われるだろうかと緊張が走るが、リアムは堂々と胸を張り歩みを進めた。
そしてすぐに近くの伯爵に声をかけ、挨拶を交わす。
「これはリアム王子。本日もご機嫌麗しく」
「ああ。ありがとう。王子はやめた。本日からはクリフォード卿となる」
恰幅のいい体の伯爵は以前までは父とも懇意にしていた人物だが、ここ数年は交流が途絶えている。一通りの挨拶を終えると、自然と話題はエミリーに向けられる。
「エストレリア卿はお元気ですか? 久しぶりにお会いしたい」
父も来ているはずだ。だがエミリーには苦々しい思いが広がる。
エストレリア伯領の財政が傾いたときには、見向きもしなかったのに。手のひらを返すように態度を変えるだなんて。