クールな王子は強引に溺愛する

「リアム様のお陰で以前通りの関係に戻れそうで、ホッとしております。当時はなにも出来ずに心苦しかった」

 なにを抜け抜けと!

 第二王子であったリアム。そして今後は力のあるクリフォード辺境伯としてのリアムを前にしているから。

 態度の違いに悲しくなる。

 リアムは回している手で数度腰を撫でた。艶かしくというよりも、どちらかと言えば宥めるように。

「その気持ちを、妻の故郷であるエストレリアへ存分に返していただけるとありがたい」

「ええ。もちろんですとも」

 豪快な笑顔を見て、胸が苦しくなる。その顔で父と談笑をしていた姿が脳裏に浮かぶ。

 伯爵の元を離れると、リアムはエミリーだけに聞こえるように話す。

「今日招待している人々は皆、キッシンジャー卿から圧力をかけられ、泣く泣くエストレリア卿と距離を取った人物ばかりだ。だからこそ脅威がなくなった今、皆一様にうれしそうにしている」

 キッシンジャー卿の圧力。

 王国の情勢に口を挟めるほど力のあったキッシンジャー卿。その人からの圧力……。
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