クールな王子は強引に溺愛する
見回してみると、確かにここに集まる人々の爵位は一番高くて伯爵。金と権力にまみれていたであろう、キッシンジャー卿に太刀打ちできるほどの力ある人はいそうにない。
「俺からしたら不甲斐ないとは思うが、それも仕方ないだろう。奴に歯向かえば明日は我が身。そうしてエストレリア伯領が傾くように仕向けられたのだよ」
「嘘……」
初めて明かされる真実に愕然とする。どうして今、そんな話。
「その脅威もなくなり、人々がエストレリア卿の元に戻ってくる姿をエミリーに見せたかった。話して聞かせるよりも、実際に肌で感じる方がいいだろう?」
リアムの視線の先にはエストレリア伯爵である父と伯領夫人の母。たくさんの人に囲まれて、談笑している。
「だから今日まで黙っていらしたんですか?」
「なんのことだ。報告が遅いとグレイソンにまた小言を言われそうだ」
誤魔化すリアムに抱きついてキスをしたい。エミリーにエストレリア伯領はもう大丈夫だと言い連ねるよりも、今のこの姿を見せたかったのだ。