クールな王子は強引に溺愛する

 大勢に囲まれる両親は本当に幸せそうで。

 目に涙が滲み、リアムに寄り添うようにもたれかかる。

「なんだ。甘えるのはもう少しあとにしてくれるか。俺はどこだろうと、口付けてしまいそうだ」

 言った側から巧妙に体を盾にし、唇を重ねる。大勢の人がいる中での大胆な行動に、エミリーの心臓はドキマギと忙しい。文句を言いたい場面ではあるが、これもリアム流の照れ隠しなのだと解釈すると、なんだか愛おしくなる。

「リアム様は不器用であらせられるわ」

「そうか? 兄上には器用にこなすお前が憎らしいときがあると言われるぞ」

 努力を怠らないという自負はあるものの、元帥にまで登り詰め、王子としての公務もつつがなく執り行なう。側から見れば難なく人生を謳歌している青年であるだろう。

 しかしそうだな。エミリーに対してだけは、易々とはいかなかった。その分、余計に狂おしいほどに求めてしまう。
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