クールな王子は強引に溺愛する

「さあ。俺たちも挨拶をしなければ。世界中にエミリーは俺の妻だと自慢したいくらいなのだから」

「まあ、リアム様ったら」

 改めて会場を見渡してみる。心を真っ新にし、穿った考え方を取り除けば自ずとわかる。ここに集まった人々はリアムだから手のひらを返したわけではなく、心から父を心配し、元通り交流が持てる今後を喜んでいると。

 そこからたくさんの人々に挨拶をし、エミリーも心置きなく談笑した。

 さまざまな人と話すうちに、前クリフォード卿は失脚したキッシンジャー伯領を引き受け、キッシンジャー伯爵になる事実も知る。

「急遽そう決まり、そのためにますます余計な時間を要した」

 リアムのぼやき半分の声を聞き、思わず笑みをこぼすと「その顔が見られたのだから、いいとしよう」と甘やかすような言葉をかけられる。

 辛かった日々が嘘のように、穏やかで幸福な時間。

 グレイソンも、いつの間にかジェシカの隣に立ち、挨拶をしている。

 それぞれの道を歩む新しい時間が、ここから始まるのを感じた。
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