クールな王子は強引に溺愛する

 子どもの頃、大人に連れられ遊びに来た修道院で、退屈だったエミリーとリアムはふたりで大人から離れ遊んでいた。

 そこで思い立ったエミリーが裏山にリアムを連れて行った。エミリーはリアムを元気付けようと思ったのだろう。蜜蜂が飛び回る蜂の巣を見せて、得意げな顔で説明をした。

「レシアスは蜂蜜が好きでしょう? ここで取れるのよ」

「蜂蜜って、蜂?」

 都会暮らしのリアムは蜂蜜が蜂の集めた蜜だと知らなかった。不思議そうな顔をするリアムに、エミリーは張り切って解説をした。

「そうなの。私たちはその恩恵をほんの少しだけもらっているのよ」

 そう言って蜂の巣を覗き込もうとしたエミリーは、一匹の蜂の襲来に遭い指先を蜂に刺されてしまった。痛いはずなのに、エミリーは懸命に訴えた。

「蜜蜂は生きるために一生懸命なの。蜜蜂を嫌いにならないで」

 半泣きで言う内容が蜂の擁護なのだから、エミリーらしい。

「それはエミリーが傷ついてもいい理由にはならない」

 当時の自分がどう感じたかは覚えていないが、そういう思いもよらない行動をし、目が離せない女の子。その想いが恋に変わるのに、時間はかからなかった。
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