クールな王子は強引に溺愛する
エミリーも眠りながら、走馬灯のように当時のことが脳裏に映像として流れていた。
初めて蜂に刺された時は痛みよりも、とにかくリアムを怖がらせてはいけないという使命感の方が優っていた。
しかしそこはやはり生まれながらの王子。エミリーよりも冷静に動き、今思えばその対応に心奪われたのかもしれない。
いや、幼いリアムと過ごした全ての日々で少しずつ惹かれていったのだろう。
その中でも特に衝撃的だったのが、蜂に刺されたエミリーに起こした大胆な行動。
手首をつかみ、持ち上げた指をリアムは躊躇せずパクッと咥えた。咥えたと思ったらジュッと吸われ、エミリーは身震いをした。
すぐに咥えた口は離され、顔を背け口に含んだ唾を吐いた。再び同じ行動をしようとする気配を感じ、バッと引いた手を胸に抱いた。
「毒があるといけない」
動揺するエミリーに対し、リアムはひどく冷静だった。リアムにとっては毒出しのつもりで、正当な行動といえる。
それでもエミリーの体はカッと熱くなり、声が震える。
「だ、大丈夫よ」
そう言って無理に笑みを作るエミリーの指先はみるみるうちに膨れ上がった。