クールな王子は強引に溺愛する
エミリーもまた、リアムの優しく穏やかな性格と芯の強い一面に惹かれていく。それは淡い恋心。
蜂に刺された晩。親に怒られたショックからなのか、蜂に刺されたせいなのか発熱した。熱はなかなか引かず、うなされているうちにリアムは帰省してしまったと知ったときには大泣きをした。
それから会えないまま成長し、レシアスが第二王子のリアムだと知る。
リアムと過ごした日々は、幼い頃のひとときの夢だった。リアムは王子として相応しい人と結婚するだろう。わかっていても実際に知るのは怖かった。
それに貴族の生活にも馴染めない。エミリーはなにもかもから逃げようとしていた。
エストレリアの財政が傾いているのを笠にして俗世から離れ、修道女にさえなれば心の平穏が訪れるのだと、そう信じていた。そう思うことでリアムへの想いから目を逸らそうとしていた。
エミリーは夢現に、自分は修道女になりたかったのだなぁと改めて思う。
今からでも遅くないのではないだろうか。リアムを忘れ、神のために仕えれば、なにもかもから解放されて。
そこまで考えを巡らせ、揺るぎない答えに行き着く。
もう無理だわ。心も体もリアム様を求めている。
エミリーは長い眠りから覚めるように、ゆっくりとまぶたを開いた。