クールな王子は強引に溺愛する
ぼんやりとした視界の中で、リアムが刮目している。
「エミリー? エミリー!」
二度名前を呼ばれ、はにかんでみせると手を握られ、包み込むように両手で挟まれる。そこに額を当て、リアムは肩を小刻みに震わせる。
「すみません。ご心配を、おかけしたのでしょうか」
まだ靄のかかる思考で懸命に記憶をたぐり寄せる。これは夢ではなく、現実の世界?
「皆、心配している」
リアムは掠れた声でいい、ベッドのすぐ傍にあるテーブルに手を伸ばし、呼び鈴を鳴らす。
するとモリーが顔を覗かせ、それから医師やクリフォード卿に、ジェシカにグレイソン。実に様々な人がエミリーの元に集まった。
そして医師の診察を受けている間に両親も到着し、エミリーの顔をひと目見るなり、母は泣き崩れるように父にもたれかかっている。