クールな王子は強引に溺愛する

「あと数日休めばいいでしょう」

 医師のひとことに、皆一様に安堵の表情を浮かべる。

 医師が退出すると、クリフォード卿に背中を押された父と母が歩み寄りエミリーの姿を見つめる。

 ふたりとも憔悴しきった顔つきが痛々しい。泣き腫らした顔の母に頬を撫でられ、その手は微かに震えている。

「良かった。本当に良かった」

「お母様……」

 しばらく見つめ合っていると、クリフォード卿が声をかける。

「今日はもう遅い。エストレリア卿たちは泊まっていってください。エミリー。よく体を休めて、元気な姿を見せて」

「はい。お気遣い感謝いたします」

 目を軽く伏せ、謝意を表す。

 父と母はクリフォード卿に促され出て行き、ジェシカも一緒に出て行く。グレイソンは出て行く間際に振り返り、リアムの現状をエミリーに報告していく。

「リアム様がエミリー様の傍らで眠ったとしても、寛容なご対応を。言ってきかせようとも離れませんでしょうし、眠るだけマシですので」

「グレイソン、言葉が過ぎるぞ」

「これは失礼いたしました」

 そう言い置いてグレイソンも退出していく。部屋には再びエミリーとリアムだけとなった。
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