クールな王子は強引に溺愛する

「リアム様、お休みされた方が」

 目覚めたばかりのときは気付かなかったが、よくよく見てみればリアムの精悍な顔つきも頬が削げ落ち、目は落ち窪んでいる。

 それでも表情は穏やかで、微笑みを浮かべ言う。

「グレイソンの言葉を聞いていなかったのか」

 ふたりのほかに誰もいなくなった寝所。リアムはベッドの傍らに腰を下ろし、再び手を握る。

 握っても反応のなかった数日。今は握り返す微かな力と、少し恥ずかしそうに頬を染めるエミリーに胸が詰まる。

「私はそんなに長く寝込んでいたのでしょうか」

「そうだな。二、三日といったところか。しかしこのまま目を開けなかったらと思うと……」

 言葉を詰まらせ、口元を押さえるリアムの目からは涙が滲む。男性のそれもリアムの涙を見るのは初めてで、切なくて苦しくなる。

「もう二度と話ができないのかと。自分の想いも告げぬまま……俺は大馬鹿者だ」

「自分の、想い……」

 真っ直ぐに見つめられ、リアムと向き合う。

「エミリー。愛している。例えエミリーが違う人物に想いを寄せていようとも、俺は」

 息を飲み、追いつかない頭を振りながら訴える。

「ま、待って。お待ち下さい。今、なんと」

「エミリーが違う人物に……」

「そうではなくて。私を、今、愛していると」
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