クールな王子は強引に溺愛する

 眉根を寄せどこか叱るような口調のリアムの体に、自ら腕を回し縋り付く。

「未だに夢見心地で、実感したいのです」

 暗に『抱いてくれ』と解釈できる言葉に、否が応でも体は熱くなる。なにもかもを忘れ、貪り抱き尽くしてしまいたい。

 この華奢な体に、か?

 リアムは強靭な自制心を持って、エミリーの腕を解き、首を振る。

「ダメだ。まずは食事を」

 潤む瞳がリアムを覗き込む。その視線から逃れるように顔を背ける。

「存分に愛したい。今のエミリーでは壊してしまいそうだ。もう失いそうな思いはしたくない」

 大きな手は頭を乱暴に撫で、そのまま引き寄せる。頭にキスを落とし、体を離された。

「食事を用意させる。ほかにも身の回りを整えさせよう」

 よろよろとリアムは立ち上がり、人を呼びにいってしまった。
< 205 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop