クールな王子は強引に溺愛する

 モリーに宣言通りの世話をされてから、部屋には両親とクリフォード卿が顔を出した。

「エストレリア卿は戻られるそうだ」

「せっかく財政が立ち直りつつある。そう何日も職務を放ってはおけない。エミリーの元気そうな顔を見られ、安心もした」

 父の隣では母も頷いている。

「それでも、エミリーを巻き込んでしまった以上、全て話そうと決めた。長くなると思うが聞いてくれるか」

 父の真剣な眼差しに緊張しつつ、「はい」と返した。

 そして父は話す上で重要な点を説明する。

「今のキッシンジャー卿は彼だが、説明するときには彼はクリフォード卿として、リアム様は第二王子のリアム様として話した方がわかりやすいだろう」

 そうだ。今のキッシンジャー卿は、大らかなこのお方だ。

 お目通り済ませてから初めて爵位を継承するのだが、それは形式上のもの。実際はあの晩餐会で周りには新しい伯爵のお披露目をしてある。

 それでもまだエミリーの中では、キッシンジャー卿と言えば、あの卑しい顔が思い浮かぶ。

 父の提案に同意する形で頷いて見せると、父は静かに語り出した。
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