クールな王子は強引に溺愛する

 修道院につくと修道院長は礼拝堂でミサを行っていると教わり、邪魔にならないように隅の方で参列した。

 礼拝堂では蜜蠟で作られた蝋燭に灯された光が淡く揺れている。荘厳な祭壇やステンドグラスの煌めく礼拝堂の中に、蜜蠟のほのかな甘い匂いが広がる。その光景も好きな光景のひとつだった。

 祈りを終え、ミサを終えた人々が礼拝堂を去っていくと修道院長はエミリーたちの前までやってきた。

「エミリー様。蜜蜂の様子を心配してやってこられたのですか? 暖かくなり蜜蜂は活動し始めましたよ」

 穏やかに告げられ、嬉しくなる。

「良かったわ。越冬が上手くいきましたのね!」

 修道院は各所に蝋燭をたくさん使う。その蝋燭を蜜蠟から作るために、養蜂をしているのだ。

 修道院では昔から蜜蠟を取る副産物として蜂蜜が取られ、屋敷に納めてくれていた。その量を増やしてエストレリア伯領の名産にできないかと、修道院長にお願いをしており、年に数度様子を見にきていた。
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