クールな王子は強引に溺愛する
手を差し出され戸惑っていると、もう片方の手は手綱を掴んだまま、更にエミリーの方へと向けられる。
「エミリー、こちらへ」
声に弾かれるように立ち上がり、リアムの手に自らの手を添えて馬車を降りる。それに合わせてリアムも馬から降り、エミリーの前に降り立った。
見上げるほどの逞しい体躯を直視できずに、視線を彷徨わせていると、腰を抱き寄せられ短い悲鳴を上げる。
一瞬の浮遊感の後にガッシリとした馬の背に乗せられていた。そして見惚れるような優美な仕草でリアムもエミリーの後ろに乗馬した。
「先に、屋敷に戻っている」
モリーにそう言い置いて、馬はゆったりと動き始めた。
手を差し出されたからといって、リアムの元に進み出た自分自身の行動にエミリーが一番驚いていた。
背中にはリアムの逞しい胸板が当たり、手綱を握る彼の腕は体をすっぽりと抱き竦められるように回されている。
突然の至近距離に緊張する上に、振り落とされないように鞍に掴まっていなければならず、色々な意味で気が気ではない。
差し出された手に、思わず自ら手を添えた自分に物申したいくらいだ。