クールな王子は強引に溺愛する
体を固くしているエミリーにリアムは耳元に唇を寄せる。
「もっと俺に体を預けたらいい」
息が掛かる距離で言われ、心臓が飛び跳ねる。
「お、恐れ多いですわ」
「体を固くされるより、ずっといい」
「重い、ですから」
「なにを言う。綿毛のように軽かった」
乗馬する際に腰を持ち上げられた事実を思い出し、体が熱くなる。
「忘れてください!」
後ろで笑っている気配を感じ、胸が甘酸っぱい痛みを伴って音を立てる。
「きみは森に現れた妖精のようだな」
さすがに今日は修道院に出向くため、使用人のお仕着せのような服装はしていない。ローレンスに『そのような格好でお戯れに』と小言を言われるのも敵わない。
柄の入ったブロケード生地のドレスは、華やかで肌触りの良さが気に入っている。
図らずもモリーがぼやいていたように『森の妖精のよう』だと言われた。お世辞だとしても品のいいドレスを着ていて良かったと、今日ばかりはドレスの重要性が身に染みた。