クールな王子は強引に溺愛する

 王都にお住まいなのですよね?
 リアム様はどうして私を花嫁に?
 エストレリア伯領を救ってくださるためだけですか?
 私を、覚えておいでですか?

 たくさんの質問が頭を巡るのに、背中にリアムの体温を感じる今の状況ではなにひとつとして言葉にできない。

 ううん。お顔が拝見できなくて助かっているのかもしれないわ。

 突然現れた文字通りの王子様に連れ去られ、夢見心地のまま馬に揺られた。

 屋敷の前で馬を止めリアムが先に降りると、「手を」と紳士的に促された。凛々しい顔立ちを凝視できずに、視線を逸らす。

 またしてもリアムの手が腰に触れたと思った途端、体がふわりと浮き上がり、短い悲鳴を上げる羽目になる。

 リアムは本当に綿毛でも扱うように優雅な所作で、エミリーを地面に着地させた。

「リアム様! 突然抱えないでください!」

 リアムの側にいると心臓がいくつあっても足りないだろう。
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