クールな王子は強引に溺愛する

 エミリーの訴えにリアムは淡々と答える。

「降りられない妻に手助けをしたまでだ」

 当たり前のように『妻』と呼ばれ、顔が熱くなる。

「まだ、『予定』ですわ」

 ああ、なんて可愛げのない言い方を。

 そう思っても、放った言葉は取り消せない。ため息が聞こえ、リアムは馬をその場に繋ぐと先に屋敷へと足を運ぶ。

 リアム様に呆れられてしまったわ。
 どうしてお淑やかにできないのかしら。

 後悔を滲ませるエミリーの耳にリアムの呟きが届く。

「その件については、今から対処するつもりだ」

 今から?

 理解できずにいると、リアムの訪問に気が付いたローレンスが和かに扉を開けるところだった。

「リアム様。お早いご到着でこざいますね」

「ああ、すまない。ひと目でも早く可愛らしい未来の妻に会いたかったのだ」

 さらりと告げられる愛の言葉に、動揺しそうになる心を鎮める。

 きっと私の両親に結婚の挨拶に来たのだから、それらしく振る舞ってくださっているのだわ。社交辞令だって、心得ていらっしゃるわよ。

 懸命に思いつく理由を並べてみても『可愛らしい』のひと言は、簡単に心を浮つかせる。
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