クールな王子は強引に溺愛する
第二王子であると同時に自国の元帥でもあるリアムの胸元にはいくつもの記章が輝いている。
腰に刀剣をさし、馬上で背筋を伸ばした鍛え上げられた姿は見惚れてしまうほどに美しい。
夢見心地で見つめていたエミリーは、ハッと我に返るとエプロンとドレスの裾を持ち上げ頭を下げた。
「あなたはエストレリア伯爵令嬢、エミリー嬢で間違いないか」
耳心地のよい低い声に胸の鼓動を早めつつ、震えそうな声で応える。
「はい。エミリー・ガルシアと申します」
夢見心地で見惚れていた自分が信じられないほどに、畏敬の念を抱き恐縮しているとリアムは耳を疑う言葉を放った。
「エミリー・ガルシア。きみは俺と結婚するんだ」
纏う空気から不穏な雰囲気を感じたのか、木々の枝で羽を休めていた小鳥がバサバサバサと一斉に飛び立った。
一瞬の騒がしさの後に再びの静寂が辺りを包む。