クールな王子は強引に溺愛する
「あの、おっしゃられている意味が……」
「正式な便りがそのうち届くはずだ」
手綱を操り、馬の向きを変えたリアムはエミリーに背を向けた。
「あの頃と変わらないな」
確かにそう聞こえたのは、エミリーの願望が起こした幻聴だろう。
リアムほどの人が覚えているはずはないのだから。
放心状態で立ち尽くし、悠然とした後ろ姿が見えなくなるまで眺め続けた。
どれほどの時が流れただろうか。
モリーの悲鳴にも似た声が、狐につままれたような空気を破る。
「今の、かの有名な第二王子のリアム様ですよね⁉︎ リアム王子に見染められるだなんて、侍女として私も鼻が高いです。エミリー様は誰よりもお美しいと常日頃から思っておりました」
浮き立ち手をたたいて喜んでいるモリーを複雑な気持ちで見つめる。